引越しに伴い、古いマットレスを捨てることになりました。処分する際に気を付ける点はありますか?
マットレスの種類によっては、通常の粗大ゴミ(大型ゴミ)の日に捨てられません。廃棄物処理法に基づく正しい処分方法を知っておくことが大切です。
一般家庭から出る不用品の中でも、マットレスは重量があるため処分が大変なものの一つです。引越しや住まいの大掃除などでマットレスを処分することになり、どうすればよいか困っている方もいるでしょう。
この記事では不用品回収のプロが、マットレスを捨てる前に知っておきたい基礎知識や、法令を守り正しく処分する方法を紹介します。
日本大学文理学部卒。後に、不用品回収専門メディア「不用品回収の窓口」に参画。信頼関係を第一に考え、多くの不用品回収業者の業務改善に注力する。同時に、環境省が主催する「使用済製品等のリユース促進事業研究会」へ定期的に参加し、不用品回収業者と協力して不用品回収やゴミ問題解決に取り組んでいる。不用品に関する多様な記事の執筆・監修も積極的に担当。
このページの内容
マットレスを処分する前に知っておくべき2つのこと
マットレスといっても、ウレタンマットレスやエアーマットレスなど、さまざまな製品がありますよね。種類によって、処分方法は変わりますか?
はい。特に注意したいのが、コイル(スプリング)の有無です。スプリング入りマットレスは、法律で適正処理困難物に指定されており、市のゴミ処理施設では処分できないこともあります。
ここでは、マットレスを処分する前に知っておきたい基礎知識を2つ紹介します。
マットレスの種類によって処分方法が異なる
家庭用品品質表示法では、一般家庭向けのマットレスをスプリングマットレス、ウレタンフォームマットレスの2種類に分類しています。(※)
マットレスの種類 | 定義 |
---|---|
スプリングマットレス | ・ マットレスのクッション材としてスプリングを使用したもの。 |
ウレタンフォームマットレス | ・ あらゆる形態で用いる寝具用のもの。 ・ ウレタンフォームの部分の最大の厚さが50ミリメートル以上のものに限る。 |
つまり、クッション材としてコイル(スプリング)が使用されたものはスプリングマットレス、それ以外のマットレスは法令上、ウレタンフォームマットレスとして区別されます。
不要になったスプリングマットレス(廃スプリングマットレス)は、廃棄物処理法により「適正処理困難物」に指定されており、市区町村のゴミの日には出せません。市に回収してもらう場合は、別途処理手数料を支払うか、自分で金属部分を解体する必要があります。
解体したスプリングは、資源ゴミの日に出しても大丈夫ですか?
自治体によってルールが異なる場合がありますが、資源ゴミとして無料で回収してくれるところがほとんどです。それ以外の部分は、細かくして燃えるゴミの日に出すか、市のクリーンセンター(ゴミ処理施設)に直接持ち込むとよいでしょう。
※消費者庁「ウレタンフォームマットレス」
※消費者庁「スプリングマットレス」
マットレスの寿命は?一般的には8年~10年が目安
マットレスの寿命は、一般的に8年~10年ほどと言われています。ただし、ウレタン素材のマットレス(高反発ウレタンや、低反発ウレタンなど)の場合、さらに早く買い替えが必要になることもあります。
特に背中やお尻を支える場所は、体重が集中するため、ヘタりやすい部分です。マットレスを長持ちさせたい場合は、定期的に頭部・脚部を逆にして、ローテーションするとよいでしょう。
なるほど。同じマットレスを10年以上使い続けているので、そろそろ買い替えが必要なタイミングなんですね。
ヘタった状態のマットレスを使用すると、起床時に肩や腰が重く感じたり、疲れが取れにくくなったりする可能性があります。引越しや大掃除などのタイミングで、思い切って処分しましょう。
マットレスの処分にかかる費用相場
マットレスを捨てるときの費用は、どのような処分方法を選ぶかによって変わります。以下は、主な処分方法別の費用相場です。
処分方法 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|
自治体に粗大ゴミとして回収してもらう | 約200円~4,000円 | スプリング入りのマットレスは不可 |
販売店の引取サービスを利用する | 無料~4,000円 | 新品への買い替えが条件となっていることが多い |
フリマアプリなどで売却する | 送料+サービス手数料 | 売却による収入を得られる可能性あり |
リサイクルショップなどで売却する | 無料 | まだ使える状態(リユース品)のマットレスのみ |
不用品回収業者を利用する | 約5,000円~8,000円 | もう使えない状態のマットレス(廃棄物)も処分可能 |
マットレスを無料で捨てる方法もあるんですね。
はい。ただし、自分で細かくする必要があったり、マットレスの種類によっては別途料金がかかったりと、処分するための条件がある場合がほとんどです。
マットレスの捨て方は?正しく処分する方法を8つ紹介
マットレスの捨て方には、どのようなものがあるか教えてください。
廃棄物処理法を守り、マットレスを正しく処分する方法は8つあります。新品への買い替えなら販売店の引取サービスを、それ以外の場合はリサイクルショップへの売却や、不用品回収業者の利用などを検討するとよいでしょう。
ここでは、マットレスの主な処分方法を8つ紹介します。
自分で細かくして一般ゴミ(通常ゴミ)として処分する
マットレスは大きくかさばるため、粗大ゴミ(大型ゴミ)として処分しなければならない自治体がほとんどです。
しかし、ハサミやノコギリで切るなどして、マットレスを細かくすれば、指定ゴミ袋に入れて一般ゴミ(通常ゴミ)に出すこともできます。解体する手間はかかるものの、無料でマットレスを処分できるのがメリットです。
マットレスを解体するときは、縦・横・高さがいずれも30cm未満になるようにしてください。ほとんどの自治体では、一辺が30cm角未満であれば、粗大ゴミではなく一般ゴミとして処分できるようになっています。
スプリング入りマットレスの場合も、金属部分は分解すれば資源ゴミの日に出せます。自分で解体するのが難しい場合は、別の方法を検討するとよいでしょう。
解体するのが難しいマットレスには、どのようなものがありますか?
例えば、ポケットコイルマットレスです。コイルがクッション内部に一つずつ埋め込まれているため、解体に手間がかかります。自分で解体する場合は、コイルが残らないようにしっかり取り除きましょう。
新品への買い替え時に「下取り」を依頼する
マットレスを新しく買い替える場合は、購入先の店舗に下取りを依頼しましょう。下取りとは、その店舗で製品を購入することを条件として、同種の製品を引き取ってもらえるサービスです。
ほとんどの下取りサービスでは、部屋の中までマットレスを回収しにきてくれるため、家から運び出す必要がありません。自分で回収業者を探す手間がかからないのもメリットです。
また販売店によっては、マットレスを無料で回収している場合があります。マットレスを買い替える際は、下取りサービスの有無にも着目するとよいでしょう。
ただし、マットレスの状態によっては、引取不可となる可能性もあります。事前に販売店へ問い合わせを行い、引取にかかる費用や条件などを確認しておくとよいでしょう。
自治体に粗大ゴミ(大型ゴミ)として回収してもらう
マットレスを解体するのが難しい場合、自治体に粗大ゴミ(大型ゴミ)として回収してもらうことが可能です。粗大ゴミとして処分する場合は、自治体の粗大ゴミ受付センターに申し込み、所定の金額の粗大ゴミ処理券を購入する必要があります。
ただし、以下に当てはまるマットレスは、自治体によって収集できない場合があります。
- 一辺が180cmを超える大型のマットレス
- コイル(スプリング)入りのマットレス
例えば、東京都新宿区の場合は、折りたたみができるなど軽量(10kg以下)のマットレスのみ回収対象です。(※1)
なお、大阪市のようにスプリングマットレスの回収を行っている自治体もあるため、お住まいの地域のゴミ出しルールを確認するとよいでしょう。(※2)
※1 新宿区「粗大ごみの処理手数料一覧」
※2 大阪市「粗大ごみ処理手数料一覧表」
自治体指定の回収業者に処分してもらう
お住まいの自治体でマットレスの回収を行っていない場合は、自治体が指定する回収業者に依頼する方法もあります。
自治体の指定業者なら、必要な許可を取得していない違法業者の可能性が低く、安心安全にマットレスを処分することが可能です。ただし、粗大ゴミとして処分するよりも高額な費用がかかる傾向にあります。
指定業者の連絡先や、マットレスの処分を依頼する流れなどは、お住まいの市区町村のホームページなどの案内を確認してください。
マットレスの処分には、どのような許可が必要ですか?
市区町村から一般廃棄物処理業の許可を得るか、直接委託を受ける必要があります。例えば、もう使えない状態のマットレスを「古物商」などの資格で回収することはできません。トラブル防止のため、必要な許可を取得した回収業者を利用するようにしましょう。
自治体のクリーンセンターに持ち込んで処分してもらう
自治体が回収した廃棄物は、地域のクリーンセンター(ゴミ処理施設)で処理されます。マットレスを運搬する手段をお持ちの場合は、クリーンセンターに直接持ち込むことも可能です。
クリーンセンターに持ち込む場合、重量に応じた手数料がかかります。自治体によっては、粗大ゴミとして回収してもらうよりも、安い料金でマットレスを処分できる可能性があります。
ただし、スプリング入りマットレスなど、処理困難物に指定された廃棄物を持ち込む場合、追加の手数料がかかる場合がほとんどです。例えば、大阪府箕面市では、重量分の手数料に加えて、マットレス1枚当たり2,080円の手数料が発生します。(※)
スプリング入りマットレスの場合は、不用品回収業者に相談するなど、別の手段を検討することをおすすめします。
※大阪府箕面市「ごみの持ち込みに関するよくあるご質問について」
フリマアプリやネットオークションで買い手を探す
マットレスの処分費用をできるだけ抑えたい場合は、フリマアプリやネットオークションを利用し、買い手を探す方法もあります。うまく売れたら、臨時収入を得ることも可能です。
ただし、フリマアプリやネットオークションを利用した方法には、以下のようなデメリットもあります。
- 個人間の取引のため、トラブルに巻き込まれる可能性がある
- 梱包や発送などの作業を自分で行う必要がある
- なかなか買い手が見つからず、引越し日などに間に合わない可能性がある
なるほど。フリマアプリやネットオークションには、リスクもあるんですね。
買い手が見つからない場合は、地元の掲示板サービスを利用し、無料で譲る方法もあります。その場合もトラブル防止のため、相手とのやり取りや個人情報の取り扱いなどに注意しましょう。
まだ使える場合はリサイクルショップに買い取ってもらう
マットレスがまだ使える場合は、リサイクルショップ(リユースショップ)に買い取ってもらうことも可能です。処分費用がかからないだけでなく、買取金額がつく場合もあります。
ただし、マットレスは中古品への抵抗感を持つ方が多いため、買取が難しい家具の一つです。買取対象となるのは、見た目が十分に新しく、人気メーカーの製品である場合などに限られます。
基本的にシミがついているものや、ヘタリがひどいものは買取対象にならないため、不用品として処分するとよいでしょう。
不用品回収業者に依頼して引き取りにきてもらう
マットレスの買取が難しい場合は、不用品回収業者に依頼することをおすすめします。
不用品回収業者を利用するメリットは以下のとおりです。
- 部屋の中まで回収しにきてくれるため、外に運び出す手間がかからない
- マットレスだけでなく、その他の不用品もまとめて回収してくれる
- 不用品の回収後、簡易清掃を行ってくれる業者が一般的
ただし、不用品回収業者の中には違法業者も存在します。違法業者に依頼すると、「トラックに積み込んだ後で、高額な料金を請求された」「ホームページに記載されていない追加料金を請求された」といったトラブルに巻き込まれる可能性があります。
どのような回収業者が、違法業者に当たりますか?
例えば、町中を大音量で巡回している業者や、空き地で回収を行っている業者などです。こうした業者は、一般廃棄物処理業の許可を受けていない可能性が高いため、利用しないようにしましょう。
マットレスを処分するときの2つの注意点
マットレスを処分するときに気を付けたい注意点は2つあります。
クッション部分のスプリングの有無を確認する
処分するマットレスが、コイル(スプリング)入りの製品かどうかを確認してください。
スプリング入りマットレスは、ほとんどの自治体で粗大ゴミとして処分できません。マットレスを自分で解体し、金属部分を取り除くか、自治体の案内する方法(指定業者に依頼するなど)で処分する必要があります。
マットレスの種類によって処分方法が大きく変わってくるため、まずはスプリングの有無を確認しましょう。
搬出できる大きさかを確認する
マットレスを外に運び出す場合は、安全のため大きさ(サイズ)を確認してから行いましょう。
玄関口や通路のサイズによっては、搬出できない場合があります。またアパートやマンションなどの集合住宅にお住いの場合、エレベーターに乗せられるかどうかも重要です。
マットレスを処分する前に、以下の項目をチェックしておくとよいでしょう。
- マットレスの寸法
- 搬入経路(玄関・通路・階段など)の広さ
- エレベーターのサイズ
マットレスの正しい捨て方・処分方法について知ろう
マットレスの処分方法は、コイル(スプリング)入りかどうかによって変わります。通常のウレタンマットレスなら、粗大ゴミとして自治体に回収してもらうことが可能です。ただし、スプリング入りマットレスの場合、ほとんどの自治体で回収を行っていません。
マットレスの捨て方に困ったら、不用品回収業者の利用をおすすめします。マットレス以外に捨てたいものがある場合も、まとめて回収してもらうことが可能です。
日本大学文理学部卒。後に、不用品回収専門メディア「不用品回収の窓口」に参画。信頼関係を第一に考え、多くの不用品回収業者の業務改善に注力する。同時に、環境省が主催する「使用済製品等のリユース促進事業研究会」へ定期的に参加し、不用品回収業者と協力して不用品回収やゴミ問題解決に取り組んでいる。不用品に関する多様な記事の執筆・監修も積極的に担当。