テレビは粗大ゴミとして処分できないと聞きました。
はい。テレビをはじめとした大型家電製品は、法律でリサイクルが義務づけられています。トラブルに遭わないため、正しい処分方法を知っておくことが大切です。
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の家電4品目は、家電リサイクル法の対象です。テレビが壊れて使えなくなったり、引越しのタイミングで不要になったりしたら、正しい手順でリサイクルしましょう。
この記事では不用品回収のプロが、テレビを処分する前に知っておきたい基礎知識や、適切に処分する方法、処分費用の目安やトラブル防止のための注意点を解説します。
日本大学文理学部卒。後に、不用品回収専門メディア「不用品回収の窓口」に参画。信頼関係を第一に考え、多くの不用品回収業者の業務改善に注力する。同時に、環境省が主催する「使用済製品等のリユース促進事業研究会」へ定期的に参加し、不用品回収業者と協力して不用品回収やゴミ問題解決に取り組んでいる。不用品に関する多様な記事の執筆・監修も積極的に担当。
このページの内容
テレビを処分する前に知っておくべき4つのこと
家電リサイクル法では、テレビのリサイクルも義務づけられているんですよね。家電リサイクル法を守らないとどうなりますか?
違法な回収業者にテレビを引き渡した場合、高額の料金請求や不法投棄など、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。家電リサイクル法に基づいて、正しくテレビを処分しましょう。
ここでは、テレビを処分する前に知っておくべき基礎知識を紹介します。
家電リサイクル法とは?家電製品のリサイクルを義務づける法律
家電リサイクル法とは、正式名称を「特定家庭用機器再商品化法」と言い、“一般家庭や事務所から排出されたエアコン、テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機などの特定家庭用機器廃棄物から、有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律”です。(※)
家電リサイクル法の対象品目(特定家庭用機器廃棄物)を処分する際は、必要な許可を取得した回収業者に依頼しなければなりません。無許可の業者を利用した場合、廃家電の不法投棄・不適正処理・不適正な管理などのリスクがある他、消費者が高額請求トラブルに巻き込まれる事例も発生しています。
回収業者に必要な許可には、どのようなものがありますか?
お住まいの自治体の一般廃棄物処理業の許可を取得するか、直接委託を受ける必要があります。廃家電の無料回収をうたう業者は、違法業者の可能性が高いため、利用しないようにしましょう。
家電リサイクル法の対象はエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の4品目
家電リサイクル法の対象となるのは、以下の家電4品目です(いずれも家庭用機器のみ)。
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
対象となる家電製品を処分する場合、リサイクル料金と収集・運搬料金の支払いが必要です。リサイクル料金はメーカーごとに異なるため、家電リサイクル券センターのホームページで確認するとよいでしょう。
家電リサイクル法に基づいてテレビを処分する流れ
テレビの処分方法は、新しく買い替えるか、処分のみを行うかによって流れが変わってきます。
【新しいテレビに買い替える場合】
- 家電リサイクル法の対象品目かどうか確認する
- 新しい製品を購入するお店に引取を依頼する
- 所定のリサイクル料金や収集・運搬料金を支払う
- 「家電リサイクル券・排出者控」を受け取る
【古いテレビを処分する場合】
- 家電リサイクル法の対象品目かどうか確認する
- 購入した店舗が分かる場合は引取を依頼する
- 分からない場合は自治体の指定業者や不用品回収業者に相談する
- 所定のリサイクル料金や収集・運搬料金を支払う
- 「家電リサイクル券・排出者控」を受け取る
家電リサイクル法において、家電販売店などの店舗は、古い家電を引き取ることが義務づけられています。新しくテレビを買い替える場合や、以前購入した店舗が分かる場合は、引取を依頼するとよいでしょう。
「家電リサイクル券・排出者控」とは何ですか?また保管する必要はありますか?
廃家電が正しくリサイクルされたことを証明するための書類です。排出者側は保管しなくても問題ありません。「家電リサイクル券・排出者控」を発行しない回収業者は、違法業者の可能性が高いため注意しましょう。
テレビの平均使用年数は10.7年!買い替え時期の目安に
内閣府の「消費動向調査(令和6年3月)」によると、二人以上の世帯において、テレビ(カラーテレビ)の平均使用年数は約10.7年となっています。買い替え理由として、最も多いものが「故障(69.7%)」、その次に多いものが「上位品目への移行(20.8%)」です。(※)
実際には、テレビの種類(液晶テレビ・有機ELテレビなど)や、製造メーカー、日ごろの使用状況によってテレビの寿命は変わってきます。古いテレビを処分しようか迷っている方は、買い替え時期の一つの参考としてください。
テレビの処分にかかる費用相場
テレビの処分には、リサイクル料金と収集・運搬料金の2つの費用がかかるんですよね。
はい。処分費用はテレビのメーカーや、引取を依頼する収集運搬業者(回収業者)によって変わってきます。リサイクル料金については、家電リサイクル券センターのホームページで検索できます。
以下の表は、主要メーカーのテレビのリサイクル料金をまとめたものです。(※)テレビの種類やサイズによって、リサイクル料金が異なります。
製造メーカー | ブラウン管テレビ(小) | ブラウン管テレビ(大) | 液晶・有機EL・プラズマテレビ(小) | 液晶・有機EL・プラズマテレビ(小) |
---|---|---|---|---|
パナソニック | 1,320円 | 2,420円 | 1,870円 | 2,970円 |
TVS REGZA | ||||
日立 | 1,870円 | 2,970円 | ||
シャープ | ||||
三菱電機 | ||||
ソニー | ||||
富士通ゼネラル | – |
上記のリサイクル料金に加えて、回収業者が設定する収集・運搬料金がかかります。収集・運搬料金については、引取を依頼する家電販売店や不用品回収業者などに問い合わせてください。
※一般財団法人 家電製品協会 家電リサイクル券センター「リサイクル料金 主要メーカー一覧」
テレビを適切に処分する7つの方法
家電リサイクル法に基づいて、テレビを正しく処分する方法について知りたいです。
はい。以下で紹介する7つの方法なら、法律を守ってテレビをリサイクルできます。
ここでは、テレビを適切に処分する方法を7つ紹介します。
新しく買い替える場合は「下取り」をしてもらう
テレビを新しく買い替える場合は、家電販売店で「下取り」に出しましょう。下取りとは、新しい製品を購入することを前提として、同種の製品を引き取ってもらうサービスです。
テレビの状態が良く、年式が比較的新しい場合は、下取り価格が付く可能性があります。その場合、査定額に応じてテレビの購入金額から値引きを受けることが可能です。
ただし、下取りを依頼する場合も、原則としてリサイクル料金や収集・運搬料金がかかります。
購入した家電販売店に引き取ってもらう
不要になったテレビを単に処分したい場合も、家電販売店に引取を依頼することが可能です。
テレビの古さ・メーカー・故障の有無にかかわらず、引取を依頼できます。経済産業省のホームページでも、購入した店舗が分かっている場合は、引取を依頼することが推奨されています。(※)
店舗によって引取方法が異なるため、事前に電話などで問い合わせるとよいでしょう。
購入した店舗を忘れてしまった場合はどうすればよいですか?
お近くの家電販売店に相談することも可能ですが、店舗によってはリサイクルに対応していない場合があります。自治体の指定業者や、不用品回収業者などに引取を依頼することをおすすめします。
自治体指定の回収業者に処分してもらう
家電販売店での引取が難しい場合は、自治体ごとのルールに従い、自分でテレビを処分する必要があります。
処分方法に困ったら、自治体の指定業者に引取を依頼するとよいでしょう。自治体が直接委託を行っているため、安心してテレビを処分することが可能です。
例えば、東京23区にお住まいの場合、家電リサイクル受付センターが家電4品目の回収依頼を受け付けています。インターネットを通じて、申し込みや受付状況の確認などを24時間行うことが可能です。(※)
ただし、家電リサイクル受付センターのような指定業者は、家電製品の壁などからの取り外しや、部屋の中からの搬出は原則行っていません。玄関先での引取が基本となるため、収集日までに自分で運び出しましょう。
指定引取場所に持ち込んで処分してもらう
テレビなどの廃家電は、回収されると地域の「指定引取場所」に運搬されます。指定引取場所は、家電製品の検品やシステム登録を行い、家電リサイクルプラントへ出荷する拠点としての役割を担っています。
テレビを運搬する手段をお持ちの場合は、自分で指定引取場所に持ち込むことも可能です。指定引取場所に直接持ち込む場合、収集・運搬料金はかかりません。
リサイクル料金は、最寄りの郵便局に備え付けられた家電リサイクル券に記入し、リサイクル料金を振り込む必要があります。この支払い方法を「料金郵便局振込方式」と言います。
指定引取場所の所在地は、家電リサイクル券センターの「指定引取場所検索」で探すことが可能です。
フリマアプリやネットオークションで売る
まだテレビが使用可能な状態の場合は、フリマアプリやネットオークションを利用し、誰かに売却する方法もあります。
テレビを製品のままリユース(再使用)する場合、リサイクル料金や収集・運搬料金はかかりません。ただし、送料やサービス手数料などが別途発生します。
またフリマアプリやネットオークションは個人間の取引のため、トラブルに巻き込まれる可能性があります。相手ユーザーとのやり取りや、個人情報の取り扱いなどには十分に注意してください。
リサイクルショップ(リユースショップ)に買い取ってもらう
個人間の取引に不安がある方は、リサイクルショップ(リユースショップ)に買い取ってもらう方法もあります。買取対象となるのは、動作が確認できる状態のテレビのみとなる場合がほとんどです。
リサイクルショップを利用する場合は、古物商の許可を有しているかを必ず確認してください。また10年~15年以上使用したテレビや、壊れて使えない状態のテレビなど、明らかに中古品としての販売が困難な家電製品を「無料で回収する」「中古品として引き取る」とうたう業者にも注意が必要です。
トラブル防止のため、信頼できる業者に買い取りを依頼しましょう。
不用品回収業者に処分してもらう
もう使用できない状態のテレビは、地域の不用品回収業者に処分してもらうことをおすすめします。
不用品回収業者なら、テレビの設置場所(部屋の中など)まで引取に来てもらうことが可能です。テレビを自分で外に運び出す必要がなく、手軽に処分できます。
また不用品回収業者では、テレビ以外の廃家電や、その他の家財道具の回収もまとめて行っています。不用品を片付けられず、家がゴミ屋敷化してしまった方にもおすすめです。
不用品回収業者に問い合わせるときは、どのようなことを伝えればよいですか?
回収して欲しいゴミの量や、建物の種類(戸建てか、集合住宅かなど)、エレベーター・駐車場の有無などを伝えておくとスムーズです。見積もりは無料のため、お気軽にお問い合わせください。
テレビを処分するときに気を付けたい3つの注意点
その他、テレビを処分するときに気を付けるべき注意点はありますか?
悪徳業者の見分け方や、テレビ本体を初期化する方法などを知っておくと安心です。
ここでは、テレビを処分するときの注意点を3つ紹介します。
壊れたテレビを無料で処分するのは基本的に難しい
テレビを処分する際は、基本的にリサイクル料金や収集・運搬料金がかかります。しかし、壊れたテレビをできれば無料で処分したいという方もいるでしょう。
リサイクル料金や収集・運搬料金がかからない処分方法として、以下のようなものがあります。
- リサイクルショップ(リユースショップ)で買い取りを依頼する
- フリマアプリやネットオークションで売却する
- 自分で指定引取場所に持ち込む(※リサイクル料金はかかる)
ただし、もう使えない状態のテレビは、買い手がつかない場合がほとんどです。壊れたテレビを無料で処分するのは、基本的に難しいことを知っておきましょう。
不用品回収業者を利用する場合はトラブルに合わないように注意する
不用品回収業者の中には、高額な料金を請求したり、ホームページなどに記載のない追加料金を請求したりする悪徳業者が存在します。消費者庁も、令和元年9月頃から不用品等回収サービスに関する相談が多数寄せられているとして、注意喚起を行っています。(※)
特に以下の業者は、悪徳業者の可能性が高いため、利用しないように注意しましょう。
- 町中を大音量で巡回している
- 空き地で回収を行っている
- 「なんでも回収します」などとうたうチラシを配布している
- 「無料回収」「格安回収」などとうたうインターネット広告を出している
信頼できる不用品回収業者を探すにはどうすればいいですか?
不用品回収比較サイトの利用がおすすめです。全国各地の優良店から、一度に複数の回収業者へ見積もりを依頼できます。査定結果を比較できるため、お得な不用品回収業者を見つけることも可能です。
※消費者庁「ウェブサイト上で「お得な定額パック 定額パック料金は、全てが込み込みの料金」などの広告・表示をして不用品・粗大ごみ回収サービスを提供する事業者に関する注意喚起 」p1
デジタル放送を受信できる機種の場合は設定を初期化する
お使いのテレビが、デジタル放送を受信できる機種の場合は、テレビ本体に個人情報が記録されている可能性があります。
テレビを処分する前に、メーカーの取扱説明書またはホームページに記載された手順に従って、テレビ本体の初期化を行ってください。
一般的なテレビでは、リモコンのホームボタン(機種によってはメニューボタン)から、ホームメニュー画面に進み、個人情報を初期化できるようになっています。
不要になったテレビは家電リサイクル法を守り正しく処分しよう
不要になったテレビは、家電リサイクル法を守って正しく処分しましょう。
無許可の回収業者を利用しても、排出者(テレビを捨てる人)に罰則はありません。しかし、高額請求トラブルに巻き込まれる可能性が高いため、信頼できる業者に依頼することが大切です。
テレビの適切な処分方法は、大きく7つに分けられます。テレビを購入した店舗が分かっている場合は引取を、思い出せない場合は自治体の指定業者や、不用品回収業者に相談するとよいでしょう。
日本大学文理学部卒。後に、不用品回収専門メディア「不用品回収の窓口」に参画。信頼関係を第一に考え、多くの不用品回収業者の業務改善に注力する。同時に、環境省が主催する「使用済製品等のリユース促進事業研究会」へ定期的に参加し、不用品回収業者と協力して不用品回収やゴミ問題解決に取り組んでいる。不用品に関する多様な記事の執筆・監修も積極的に担当。